エンドユーザー部門と情報システム部門の協力が重要
日本でRPAに注目が集まるようになったのは2016年ごろ。大手金融機関が導入したことが紹介され、2018年になると製造業、流通・小売業など採用する業種も拡大していった。当初は大企業での導入事例が多かったが、近年では中小企業でも真剣に導入を検討するケースが増えている。
しかしながら、「RPAを入れようと考えているが、情報が氾濫していて何から手をつければよいのかわからない」という企業も多い。また、「試験的に導入したものの活用できない。効果が出ない」「PoC(概念実証)は行ったが本番展開や全社展開に二の足を踏んでいる」といった声も聞こえてくる。さらに、各エンドユーザー部門が独自にRPAを導入していった結果、情報システム部門の管理から外れた「野良RPA」が乱立してしまうといったガバナンスの問題に頭を悩ませている企業もある。

SCSK株式会社
プラットフォームソリューション事業部門
ITエンジニアリング事業本部
ミドルウェア第一部
第三課 課長代理
真田 光晴 氏
これまでに数多くのRPA導入を手掛けてきたSCSKの真田光晴氏は、「エンドユーザー部門と情報システム部門が協力して導入に取り組むことが成功の秘訣」と強調する。
「RPA導入のイニシアティブを現場がとるのか、情報システム部門がとるのかで悩んでいる企業も多いようです。しかし、両部門の摩擦というのは、RPAに始まったことではありません。現場が業務をスムーズに進めるために、情報システム部門に断りなくフリーソフトを導入したりマクロを組んだりすることは以前からありました。問題はシステムを作る情報システム部門と、業務を遂行する現場との“溝”を埋めることです。両者が協力しなければRPA導入はうまくいきません」
ビジネスにおけるITの役割が重要性を増すなかで、情報システム部門の業務は増加する一方だ。エンドユーザー部門からのRPAに対するニーズを全て情報システム部門で対処するのは、難しいと言わざるをえない。
「業務について詳しく知っているエンドユーザー部門がRPA導入を担当し、情報システム部門はそれをけん引・管理する役割を担うのも一つの手です。RPA対応に伴う両部門の工数を按分し、負担を軽減できるのに加えて、お互いが得意な分野に注力できるようになり、効率的にRPA導入を進めることができます」と、真田氏は提言する。

SCSK株式会社
プラットフォームソリューション事業部門
ITエンジニアリング事業本部
ミドルウェア第一部 第三課
二関 優介 氏
また、「最初にすべきことは、業務の流れを俯瞰して全体を見直すことです」とアドバイスするのは、SCSKの二関優介氏だ。
「ある業務をRPA化したものの、その業務自体が必要のないものであることが導入後に明らかになるケースがあります。RPAを導入する前に、『なぜその業務が必要なのか』を改めて見直しておくことが重要です」
業務の棚卸しを行い、本当に必要な業務だけを選び出した上でRPA導入に着手する。面倒なように思われがちだが、無駄なくRPAを導入するためには欠かせない手順ということになる。
では実際に、RPA導入を成功させ、将来的に全社へ展開しようとするとき、どのような点に気をつける必要があるのか――。真田氏と二関氏は、2つの大きなポイントがあると話す。