AI・機械学習

人間よりもボットとの対話--アイデア創出に有効な可能性

先ごろ公開された研究結果によると、ボットと対話していると思った方が、アイデアを生み出す上ではうまくいくことが示されたという。

 計算機協会で発表された最近の研究では、興味深い実験が行われた。3回の実験では、個人がテキストを介したやり取りを行い、アイデアを生み出す作業がテストされた。最初の「コントロール」グループには、人間または「ボット」(ロボット)のチャット相手が割り当てられた。次の実験では、全てのチャットパートナーが人間と一緒に作業していたが、チャットの相手が人間かボットのどちらであるかをランダムに伝えられた。最後の実験では、チャットの相手がボットであるにもかかわらず、参加者には人間とボットのどちらとチャットをしているかがランダムに伝えられるという、逆のシナリオを試した。

 実験の結果、チャットの相手が機械であるか、機械のふりをしている人間であるかにかかわらず、人間はボットと対話していると思った方が、アイデアを生み出す上ではうまくいくことが示された。これは驚くべきことであり、直感に反するように見える。どんなに優れた人工知能(AI)ツールでも、新しいアイデアを生み出すのに苦労しているのだから、ボットの方が優れたアイデアを生み出すパートナーであるという指摘は、最初は奇妙に思えるのだ。

 さらに直感に反する点を付け加えるとすれば、自分を「社会不安が強い」と表現した参加者の集団が、より機械的なイメージを持つボットと対話しているときに、アイデアを生み出すパフォーマンスが一層向上した。ますます人間に近いAIツールを作ろうとする中で、少なくともある分野では、ロボット的で人間的でないやり取りの方が実際には優れているようだ。

私たちの人間性が失われるとき

 この調査をもう少し詳しく読んでみると、「ボットの力」はAIの賢さというよりも、「批判されることはない」と感じられる状態を作ることにあるようだ。私たちは皆、ブレーンストーミング会議や総会などで、カリスマ性や組織内での地位、無愛想さなどを駆使して、1人の人物が議事進行を支配している場面に遭遇したことがあるだろう。人間ではない相手と接するとき、私たちは無意識のうちに自己検閲を引き起こす可能性のある拒絶や他人の目に対する恐れを捨て、人間同士の交流では自己制限する創造性を発揮するようだ。

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 これは全く新たな、未知の現象というわけではない。独り言や日記といった古くからある手段を考えてみよう。そこでは、他人からの批判とは無縁のプライベートな状況で、さまざまな思考やアイデア、アプローチを明確に表現することで試していると言って良いだろう。不完全で常軌を逸したアイデアを個人的な日記に書くことで、そのアイデアの初期段階の核心を公にしなければならない場合には不可能な、画期的な思考が可能になるかもしれない。今回の実験でも、同じメカニズムが働いているようだ。仲間に批判されるのではないかという潜在的な不安が解消されれば、私たちはもっと創造的になれる。

 不安の大きいグループでは、このことがさらに意味を持つ。なぜなら、人間と交流しているわけではないとはっきりと認識することで、対人関係によって引き起こされる不安が軽減されるからだ。かつて誰かが「親愛なる日記さん」と書いて、明らかに人間ではない紙の日記と対話を始めたように、私たちは将来、「親愛なるボットさん」と入力して、個人的な課題や創造的な課題に取り組むことになるのかもしれない。

テクノロジーリーダーにとっての意味

 特にAIバイアスの一般的な目標がより人間に近いやり取りに傾いていることから、テクノロジーリーダーにとっていくつかの興味深い示唆がある。アイディアを生み出すという特別なケースでは、その逆の方が都合が良いようだ。この結果を推定すると、人間が批判に直面したり、仲間とのネガティブな社会的交流を恐れたりするような状況は全て、ボットといった非人間とのやり取りに適していると考えられる。倫理や人事、メンタルヘルスといった分野は、よりオープンなやり取りができるようになるため、意図的に機械のようにしたボットにとって大きなチャンスがあるかもしれない。

 この研究結果と人間の心理についての一般的な理解に基づけば、60人規模の「Zoom」会議を行い、それを「安全な空間」と呼ぶことは、どんなテーマであってもオープンで型破りな思考を促すことにおいては、まさに最悪の環境だと言えるだろう。

 最後に、今回の研究から得られた魅力的な教訓は、ボットやAIを全く必要としないものだ。マインドマップやメモ帳、付箋、油性マーカーなどのツールとともに、構造化された個人的な「考える時間」を与え、まとめ役がそれぞれのコンセプトを照合して匿名で発表するだけで、ボットを少しも関与させなくても、チームのアイデアを生み出す能力を飛躍的に向上させられる可能性があるということだ。

提供:iStock/Besjunior
提供:iStock/Besjunior

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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