マーケティング

360度顧客ビューの追求は現実的か--考慮すべき顧客や規制環境の変化

360度の顧客ビューについてガートナーはこの4年で主張を変えている。同社のレポートからその背景を考える。

 たった4年でこうも変わるものかと驚かされる。Gartnerは2017年、「Create Powerful Customer Experiences With a 360-Degree View of Your Products」(360度の製品ビューで強力な顧客体験を作り出す)というレポートを発表して、企業がそれを実行する必要性を宣言したが、その領域にすでに到達した企業が10%以下であることも認めた。しかし、2021年になって、Gartnerは方針を転換し、「Act now: Abandon the pursuit of a 360 degree customer view」(今すぐ行動せよ。360度の顧客ビューの追求を放棄しよう」と題されたブログ記事を投稿した。

 何が変わったのだろうか。現実が変わっていないことは確かだ。GartnerのアナリストのBenjamin Bloom氏によると、「2017年にほとんどの企業が『Customer 360』を達成できなかったのと同じ理由で、現在もほとんどの企業が失敗している」という。「その理由とは、ほぼ解決不可能な技術的課題、加速する規制当局による詮索、そして、顧客が望むものを無視したデータ収集慣習だ」(Bloom氏)

 とはいえ、ベンダーがその夢を売り込もうと試みるのをやめることはないだろう。

360度の過剰な売り込み

 そうとは思わない人は、Googleで「顧客の360度ビュー」を検索してほしい。さまざまな宣伝文句が表示されるはずだ。これには私も多少の罪悪感を覚える。前の会社で働いていたときに、そうしたベンダーによる売り込みに加担していたからだ(ため息)。

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 興味深いことに、Gartnerは2020年に「The False Promise of a 360-Degree Customer View」(360度の顧客ビューという偽りの約束」という記事を公開している。

360度の顧客ビューを達成することにどれだけの見返りがあるのかは、非常に疑わしい。マーケッターは、360度の顧客ビューを追求するのではなく、適切なデータポイントのセットを収集すること目指して、そこでやめるべきだ。

 その記事には、Gartnerが2019年に公開した「What Marketers Need to Know About Customer Data」(マーケッターが顧客データについて知っておくべきこと)記事へのリンクが含まれる。

可能な限りすべてのデータポイントを収集するのではなく、最も有用なデータの収集に焦点を合わせよう。

 もちろん、「適切な」、または「最も有用な」データが何であるのかを正確に把握するのは、容易ではない。データレイクやデータウェアハウスなどのビジネスが急成長しているのは、そのためだ。私たちは、有用なデータが含まれていることを期待して、ますます多くのデータを収集し続ける。実際に、有用なデータが含まれていることもある。

 しかし、Gartnerによると、そのデータがどれだけ「適切な」ものであっても、360度の顧客ビューを試みるのは、間違った解決策であることが多いという。

Customer 360の問題点

組織にどれだけ豊富なリソースがあったとしても、資金は常に有限である。そのため、マーケティング組織にとって得策なのは、最終的に伝説の「360」に到達することを期待してデータを備蓄するのではなく、短期的で価値の高い活動にリソースを割り当てることだ、とGartnerは主張する。

 Gartnerのクライアントとの議論で、「Customer 360」を構築するためには、途方もない技術的および財政的コミットメントが一貫して求められることが明らかになっている。さらに、今日の環境が原因で、新たに複雑な問題も出てきている。具体的には、顧客の間で、自社内で、そして、規制環境で、変化が猛烈なペースで起きている。360度ビューを検討している企業は、多額の経済的コストに加えて、この多額の投資、さらには、ほぼ解決不可能な技術的課題、加速する規制当局による詮索、顧客が望むものを無視したデータ収集慣習といった途方もなく困難な問題にも取り組まなければならない。

 Customer 360は、成功させるのが不可能なのではなく、犠牲が大きすぎて割に合わない。コストに見合うだけのメリットがない。Gartnerが2017年の予想と相容れない新たな見通しを発表したのは、そのためだ。「2026年までに、『360度の顧客ビュー』を追求する組織の80%は、それを放棄するだろう。そうした取り組みは、データプライバシー規制を軽視して、時代遅れのデータ収集方法に依存し、顧客の信頼を損なうからだ」

 今は2021年だ。360度の夢を放棄して先に進むのに、2026年まで待つ必要はない。

 情報開示:私はAWSの仕事をしているが、本記事には個人的な見解だけを記しており、AWSの見解は反映されていない。

提供:iStock/metamorworks
提供:iStock/metamorworks

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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