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会社が業務妨害?-- IT武装した職場の生産性がなぜ上がらないのか

会社はIT環境に投資しているのに生産性が上がらないという状況はなぜ生まれるのだろうか。会社と社員双方の視点から考察する。

 第1回では、リモートワークで長時間労働が多発する職場の“残念な共通項”として、実は「職場づくり」の巧拙に最大のポイントがあることを紹介した。今回は、リモートワークへのシフトが進む中「職場のIT化」を急ぎ、ITツールを導入して多額の投資をしたものの、生産性が上がらないのはなぜなのか、実態とその原因を探りたい。

リモートワーク関連の投資額はまだ増え続ける

 新型コロナウイルス感染症の流行拡大を受け、多くの企業がリモートワークの導入を迫られた。まずは社員が社外で働けるようにするため、ITハード面の強化から入った企業も多いのではないか。リモートワーク対象社員分のモバイルPCの用意、外部からアクセスできるWi-Fiなどのネットワークや仮想私設網(VPN)の整備、「Microsoft Teams」や「Zoom」などのコラボレーションツールの導入、セキュリティの強化…IT投資額は一気に増加している。

 ある調査では、2021年も世界のリモートワーク関連支出はまだ増え続け、2020年比4.9%増、3239億ドル増を予想している。まだコロナ禍が続き、長期化に耐えるための新たなリモートワーク対応(例えば業務プロセスのリモート化、セキュリティのさらなる強化など)を迫られたり、コロナ収束後でも新たな働き方としてリモートワークを継続できる仕組み作りにシフトしたりと、リモートワーク関連の支出増はしばらく続くと考えられる。

投資を続けIT化を進めても、なぜ生産性が上がらないのか

 企業は労働環境を整えるために、IT投資や新しいツールの導入などをしているにもかかわらず、生産性が上がったという声が少ないのが現状だ。この理由を、会社側と社員側の両面から見てみよう。

1. 会社側の視点:ITハード面の整備と監視の強化で安堵

 リモートワークを導入するためのITハード面が揃うと、次は、社員が会社の資産を持ち出して目の届かない場所で働くことに対する“監視”が必要と、「人への“縛り”の強化」が始まる。PCの持ち出しルールを見直し(時折、この持ち出しに一定期間ごとの“ハンコ”が必要だったりするところもあるから厄介だ)、ウェブサイトの閲覧権限を狭め、実施業務の報告単位を細分化していく。多くの社員がサボることが前提かのように、“縛り”は厳格化されていく。

 コロナ禍によるリモートワークへのシフトから約1年が経過し、会社側としては、社員にITハード面を与え、サボれない環境も整えた。社員は通勤もなく体力的にも負担が軽くなったのだから、今までと同じかそれ以上に仕事が捗るだろう、と安堵するタイミングではないだろうか。しかし、この厳格化が生産性に影響を与えていることに気付いていない。

2. 社員側の視点:放置時間の発生、業務妨害の発生、非効率なコミュニケーションによるモチベーションの低下

 一方、社員側の視点で見てみると、急激なIT化、リモート化による混乱が起きている。

 家で仕事ができるスペースが無かったり、貸与PCのスペックや自宅ネットワークの弱さ、VPNの混線などの原因により重いファイルの操作がスムーズに行えなかったり、自分の努力だけでは自宅で仕事をする環境を整え切れないこともある。

 いざ仕事をしようとPCを開いても、新しいアプリの使い方が分からない、PCトラブル時の初期対応ができないなど、これまでIT部門に依存していたことで、社員側のITリテラシーが低いままで使いこなせないこともある。

 結局、重いファイルの保存や送信の間は何もできずにぼんやりし、トラブルに対してなんとか見つけ出した連絡先にメールを投げて返事を待つ。どうにもならない「多くの放置時間」を過ごすことになる。

 また、業務ツールへのアクセス制限やウェブ閲覧制限が強くなり、制約が多すぎて仕事にならないこともある。ある企業の例では、持ち出しPCから外部サイトへのアクセス制限を強めた結果、事務系の仕事にもかかわらず、郵便物の料金検索さえできなくなっていた。全てのドキュメントはもちろん印刷不可のため、PCに打ち込んである宛先も手書きするしかない。もはや会社側に「業務妨害されている状態」である。

 さらに、オフィスにいれば周囲の仲間に少し話せば解決しそうなことも、家で独りではすぐに解決できない。話せば瞬時に終わりそうなこともメールを打つと時間がかかってしまう。そしてさらに返事を待つ時間が無駄になる。「コミュニケーションの取りづらさ」で仕事が進まない。諸々重なって徐々に仕事へのモチベーションも下がっていく。

 このように、会社側はリモートワークに対応するためIT投資をし、社員は与えられた環境で業務を進めるための努力を重ねているものの、残念ながら両社はすれ違い状態である。

 その結果、生産性は上がるどころかむしろ下がっているのだ。

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