編集部より:Garry Kasparov氏は、22歳でチェスの世界チャンピオン、その後15年間世界チャンピオンを保持し続けた。この記録は今に至るまで世界最長とされている。1997年にIBMのコンピュータ「Deep Blue」に僅差で敗れたことでも有名。テクノロジーと民主主義の関係を議論した。
二つの全く異なる独裁政権を経験してきた筆者は、アメリカ人やヨーロッパ在住の人が「言論の自由」について議論しているのを見ると、少し不思議に感じてしまう。世界の約半数が、政権によって言論がコントロールされている権威主義の下で生きている中、そうした人たちとは全く無関係な法律や細かな意味について議論しているからだ。
このような議論が重要でないわけではないが、われわれは、政府の報復を恐れずに言いたいことを言うことができる贅沢さに感謝すべきだ。また、政府に何かを求める際には注意した方が良い。例えば、ある言論に対する政府の監視強化、制限、抑制につながるような法的手段を求める場合、あなたが望んでいない形でその法が適応されてしまう可能性があることも認識しておくべきだ。
政府に与えられた権力が国民に還元されることはほとんどなく、戦わずして還元されることもない。自分が支持している政治家が主導権を握っていて、自分にとって都合の良い状態のときには、このことを忘れがちだ。そのため、支持・反対に関係なく、すべての政治家に対する監視と制限が不可欠だ。
例えば、米国でのTrump氏からBiden氏への政権交代は、政策やレトリックが劇的に変化したことを示している。Biden政権はすぐに、前政権の政策を取り消す作業に取り掛かかっている。
しかし、これらの大統領令は、議会で審議、可決されたわけではないため、次の大統領によってまたすぐに取り消される可能性もある。
立法に必要な交渉などを行わずに、このように状況が大きく変化する場合、たとえ善意の意図があったとしても、そうした動きに対する過剰反応や予測できない結果を招くことがある。議会での議論は非常に時間がかかるが、それが美徳の一つでもある。議会で良いアイデアはほとんど出ない一方、多くの悪いアイデアも国会で消えている、と言われているくらいだ。
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