パンデミック前の時代では、仕事の電話中に犬が吠えたり、赤ちゃんが泣いたりするのは、気まずいことだった。今では、これらの予期せぬ訪問者は、立て続けの「Zoom」通話の単調さを破ってくれる歓迎すべき中断となっている。
ビデオ会議のルールに関して変わったことは、それだけではない。コミュニケーションの専門家や最高人材活用責任者(CPO)によると、皆の個人的な空間が垣間見えるようになったことで、仕事の人間関係に変化が生じているという。
Speaker Dynamicsのオンカメラコーチ兼最高経営責任者(CEO)のKarin Reed氏は、1年間のリモートワークによって、同僚たちが互いを単なる仕事仲間ではなく完全な人間とみなすようになった、と語る。
「各自の個人的な空間における課題を理解し、互いに非常に強い共感を覚えるようになった」(Reed氏)
Reed氏と会議の専門家がその専門的な知見をまとめた新刊書「Suddenly Virtual: Making Remote Meetings Work」が、米国時間3月9日に出版された。共著者のJoe Allen氏はユタ大学の産業組織心理学の教授で、Center for Meeting Effectivenessのディレクターも務めている。
この書籍は、良い会議に必要な要素についての研究と、実践的な応用のアドバイスを組み合わせたものだ、とReed氏は述べた。
本記事では、2人の著者と他のビジネスリーダーたちが、2021年におけるZoomの新しいルールについて学んだことを紹介する。
中断は悪いことではない
Fuzeのブランドおよびコーポレートコミュニケーションズ担当バイスプレジデントであるLisa Walker氏は、この1年間で、同僚の配偶者やルームメイト、ペット、子どもたちのことを知ったと語る。同僚たちは先日、同氏の個人的な節目を祝うのを手伝ってくれたという。
「数週間前、ビデオ会議の最中に夫が入ってきて、私にキスをした。パンデミック下で引っ越してきたバーモント州で、息子が新しい学校への転入を認められたからだ」とWalker氏。「ビデオ会議の参加者たちが示したのは驚きではなかった。代わりに、私がキスの理由を説明したので『やった!』という反応が一斉に起こった」
データインテグレーション企業Matillionでピープルオペレーションズ担当バイスプレジデントを務めるVicki Marchington氏は、同社が中断を受け入れるようになったと述べ、その理由として、中断というダイナミクスが、同僚たちの人間的かつ個人的な本物の関係を生み出すという点を挙げた。
ただし、TiLTの創設者でCEOを務めるJen Henderson氏によると、このように人間全体を受け入れることは、家族第一のアプローチを採用する企業においても、まだ発展途上の取り組みだという。
「赤ちゃんを抱いて会議に参加すると、会話が人間味を帯びるが、それが『当たり前』になるには、何度も繰り返す必要があるだろう」とHenderson氏は語る。「従業員はまず、自分たちのゲストの参加を謝らないことから始めよう。他の参加者はそれを無視しないようにする必要がある」
Reed氏は、中断が起きていないふりをするのではなく、すぐに問題解決モードに入る必要があると述べた。
「音声をミュートにしてビデオを切り、問題を解決してから、謝って会議に戻ろう」(Reed氏)
カメラの選択について明確に伝える
「Suddenly Virtual」の第1のルールは、カメラをつけたままにすることだ。著者によると、カメラをオンにした会議は効果が25%高まるという。Reed氏は、ビデオでのコミュニケーションに関するトレーニングセッションの冒頭で、いつも同じ質問をすると述べた。それはビデオ会議でカメラをオンにする頻度を問うもので、選択肢は「毎回」「全くしない」「他の全員がオンにしているときだけ」だ。パンデミックの前は、「全くしない」という答えが最も多かった。今では、「他の全員がオンにしているときだけ」と答える人が大半を占める。
「人々はビデオに価値があることを認識しつつあるが、会議の効果を見極めるためにビデオを受け入れることには消極的だ」と同氏は語る。
一方で、カメラに向かって話す気にならないときは、はっきりそう伝えるべきだ。FuzeのWalker氏も、率直に言うようチームメイトに促していると述べた。
「他の会議参加者にビデオをオフにしておくと伝えることは、必要な場合は全く問題ない。会議の開始時にそれを明確に伝えることで、誰もが対等であると感じられるようにすることが重要だ」(Walker氏)
発表者に反応を示す
ビデオ会議の課題の1つは、対面で聴衆に語りかけるときのような反応を得られないことだ。ウェブカメラのまぶしい光を見ながら、場の雰囲気を感じ取るのは難しい。
FullStoryの最高マーケティング責任者(CMO)であるKirsten Newbold-Knipp氏は、同社のエンジニアがこの問題の新しい解決策として「BWAMP」を開発したと述べた。これはビデオ会議と並行して実行されるフィードバックチャネルで、拍手、笑い声、乾杯のときのグラス、絵文字の泡などの音を鳴らせる。