本連載では、中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)について解説してきました。最後の2回では、スタートアップ企業での顧客関係管理システム(CRM)活用を中心に取り上げます。
スタートアップ企業では、事業開始当初からデジタルを最大限に活用した組織づくり、業務設計をしている場合が多いです。歴史ある中小企業ほどの変革の困難さはありませんが、それでも気をつけるべき点はあります。
筆者は、セールスフォース・ドットコムでインサイドセールス部門の本部長をしており、若手社員を中心にしたチームで、マーケティングと営業をつなぐための組織を運営しています。インサイドセールスに限らず、組織全体で顧客中心のコミュニケーションをとるための組織づくりや考え方について解説します。
緊急事態宣言解除までのスタートアップ企業の働き方の変化
新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言発令前後から、スタートアップ企業の多くがテレワーク、オンライン会議、オンラインセミナーなどで柔軟に事業運営を変化させていました。組織が大きくないこと、初めからデジタル中心の働き方を前提していることに加え、市場の動きにあわせて変化できる企業が多いからだと思います。
新しい事業戦略にシフトした企業もあり、新たな収益を得ている企業もあります。セールスフォース・ドットコムの戦略投資部門であるSalesforce Venturesが国内の企業向けクラウドサービスを提供するスタートアップ企業を対象に実施した「新型コロナウイルスのSaaS企業への影響に関する実態調査」でも、この傾向ははっきり出ています。
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