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「Azure」への移行を進めるLinkedIn--最大の狙いは先端技術の早期採用

LinkedInは、自前のデータセンターから「Microsoft Azure」への移行を進めているが、それはマイクロソフトの子会社だからではない。LinkedIn単独では用意できないようなテクノロジーを利用できるからだ。

 その一方で、LinkedInは独自の製品の開発も継続するが、同時に移行の準備も進め、Azureでの稼働開始後に終了できるものを検討する。

 「一般に、ストレージのインデックス作成など、インフラストラクチャーの構成要素がエンジニアリング組織の他の部分に提供するインターフェースは、変更せず現状のままとするか、少なくとも非常に類似したものにする必要があるため、当社のインフラストラクチャーチームは、パブリッククラウドでインフラストラクチャー構成要素を実行できるように調整するという大変な作業を担当することになる」。Hiremagalur氏はこのように述べた。

 しかし同氏は、LinkedInの現在のインフラストラクチャーをクラウドにコピーするだけで終わりにしたいとは考えていない。「これは当社にとって、コンピューティングとストレージを分離する好機だ。弾力性を極めて大きな規模で活用して、LinkedInの日中のワークロードパターン(大半のユーザーが勤務時間中にログイン)に対応する機会となる。Azureへ移行しながら活用を始めたいと考えているものだ」

 LinkedInは非常に大規模なグラフデータベースを使用している。多くの「Kafka」(LinkedInで開発され、2015年までに1日あたり1兆件以上のイベントを処理していた)と、Kafka上に構築されたオフラインコンピューティングや機械学習などのSamzaストリーム処理システムがある。非常にネットワーク集約型で、ユーザーアクティビティからLinkedInデータセンターに送信されるデータ1バイトにつき、約1000バイトの東西トラフィックがデータセンター内で生成される(その情報をLinkedInのグラフシステムと機械学習システム用に分析し、たとえばユーザーの知り合いかもしれない人物をお薦めする)。

 「このようにネットワークとストレージの集合体を大きな規模で活用するとともに、コンピューティングとストレージを分けてスケーリングできるようになる。非常に大量のデータを扱うシステムなので、この2つを別々の単位として管理できることも、大きな利点だ」(Hiremagalur氏)

 「ネットワークの遅延が少ないほど、グラフデータベースのトラバーサルでできることが多くなる」と同氏は指摘する。「グラフをとても興味深い方法でトラバースするには、もちろん、非常にうまく設計された高性能な分散システムも必要だが、最高級のネットワークも必要になる。こうしたワークロードのためにサーバーレスを大きな規模で利用できる能力を得て、スピンアップやスピンダウンについて気にしなくてもよくなるのが楽しみだ。こういったものは、サーバーレスコンピューティングに非常に適している」

 LinkedInは、Azureに移行するにせよ、自社データセンターにとどまるにせよ、このようなアーキテクチャーの変更を検討していたはずだ。しかし、この移行によって、インフラストラクチャーの中でLinkedInがAzureに完全に引き渡す部分が出てくることになる。

 「大規模なワークロードをパブリッククラウドで運用するとなると、自社での管理、すなわち自社で文字どおりすべてを100%制御するのとは事情が異なる。したがって、こうした変更に伴い、サイトを非常に安定的に運営する方法を学ばなければならない」(Hiremagalur氏)

 エンジニアはハードウェアやサービスの障害について考えるのではなく、自分たちで制御できないアップグレードサイクルについての計画を立てる必要がある、とHiremagalur氏は説明する。「Azureから送られてくるシグナルへの対応について学習するとともに、ワークロードを移動する方法や一時停止する方法を考え出さなければならない。セキュリティの管理の方法も変わっていく。自社で100%制御できるスタックのレイヤーは、縮小する一方だろう。ネットワークも、異種のデータセットも自社では制御しない。したがって、情報セキュリティについての考え方を新たにし、境界セキュリティに対する考え方を発展させる必要がある」

 このような話はクラウド移行でよく耳にする。つまり、アプリケーションを別のサーバーに移行するということではなく、実行する必要があるものを別の種類の抽象化に移すということだ。この作業が完了したら、より高いレベルの問題に集中できるという利点が得られる。

 「これで、自分たちが独自の価値を提供できる分野に注力し、Azureが極めて大きな規模で非常にうまくやっていることはAzureの担当者に任せられるようになると思う」とHiremagalur氏。「私はこれを海面上昇のようなものだと想像している。海面に沈むものは、Azureに依存できるものだ。それ以外のものに引き続き取り組んでいき、注力を大幅に拡大させることができる」

オンプレミスは新たなメインフレーム

 Open19イニシアチブがなくなることはないとHiremagalur氏は述べる。「すでにOpen19から多くの価値を得ている。当社のデータセンターにデプロイしたし、OCPに多くのテクノロジーを提供した。彼らとは今後も協力していく」

 だがHiremagalur氏は、独自のクラウドを運用するFacebookのような巨大組織は別として、自社の開発者の要求を受けてワークロードの多くをパブリッククラウドに移行させる企業が増えていく、とも予想している。

 「これからの5〜10年でパブリッククラウドで起きるイノベーションを活用できない企業は、メインフレームを運用している企業と同じだと見なされるかもしれない。そのような見方はされたくないものだ」

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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