今回は普段よりも広い視野で、法的な領域に踏み込んでみたい。テクノロジーは単なるハードウェアやソフトウェアだけでなく、私たちの生活や社会のあらゆる側面の基本的な構成要素だ。
アメリカでは2019年、法執行機関のためにバックドアを追加したことで暗号化の効果が低下したことを米司法長官のWilliam Barr氏が認め、驚くことにニュースとなった。米国政府は長い間、国家による監視とアクセスはトップレベルのセキュリティと共存できるとして、公には否定されてきたのだ。著名な専門家のBruce Schneier氏は、このトレードオフについて真剣に議論すべきだと書いている。
「今回のニュースにより、われわれはやっと理にかなった政策対話ができるようになった。確かに、バックドアを追加することで、法執行機関が悪意ある者を盗聴できるようになり、社会のセキュリティは強化される。その一方、悪意のある人も盗聴ができてしまう。これは重要な政策論争のテーマであり、われわれがセキュリティと監視を両立することができるか、という偽りの議論ではない」
一般の人が解読不可能な暗号化に賛成するかどうかにかかわらず、このような問題ではすべてを手に入れることも、すべての人を幸せにすることもできないと認める必要がある。
残り本文:約4031文字 ログインして続きを読んでください。