「Mathematica」「Wolfram|Alpha」「Wolfram」言語を生み出した知の巨人が、プログラミング言語がどう発展すべきかを語った。その内容を前編と後編に分けて紹介する。今回はその前編。
宇宙人の難解な文字を解読する言語学者に力を貸してくれそうなコンピューターサイエンティストを探すとなったとき、声がかかったのはStephen Wolfram氏だった。
確かに、このような地球外生命体はSF映画「メッセージ」の中にしか存在しないかもしれないが、実際に地球外生命体が軌道から落ちてきたとしても、Wolfram氏は連絡すべき少数の人々の1人だろう。
英国生まれのコンピューターサイエンティストであるWolfram氏の人生は、素晴らしい偉業に満ちている。20歳のときにカリフォルニア工科大学で理論物理学の博士号を取得し、21歳でマッカーサーフェローを受賞。さらに、「Mathematica」数式処理システム(世界中で膨大な数の数学者、科学者、エンジニアが使用)、「Wolfram」言語、「Wolfram|Alpha」ナレッジエンジンを開発した。
「メッセージ」への協力の依頼は、突然舞い込んできた。同氏によると、机の上に興味深い脚本が置かれており、まもなく撮影が開始される映画でコンサルティングといくつかの映像の作成に助力してほしいとの依頼が添えてあったという。
Wolfram氏の役割は主に脚本中の科学や技術に関する部分について助言することだったが、息子のChristopher Wolfram氏が担当したのは、言語学者が準拠枠のほとんどない状態で宇宙人の文字を解読する方法を考え出すことだった。そのため、Wolfram言語も一部のシーンで使われている。
作中で、Wolfram言語が実行される場面がある。同言語が宇宙人の表語文字を解体して小さな単位に分け、劇中の言語学者がよく使われるパターンから意味を推測できるようにするシーンだ。
「これは宇宙人との最初の接触の物語だが、本質は言語と、私たちが物事を理解する方法だ。その点が興味深かった」。Wolfram氏は、自身と息子が依頼を引き受けた理由をこう説明する。
「私は人生の大半を計算言語の設計に捧げてきたので、言語のようなもので思考を伝えられることに当然興味がある」
Wolfram|Alphaの壮大な使命
Wolfram氏のすべての偉業の中で最も有名なのは、おそらくWolfram|Alphaの開発だろう。このコンピュテーショナルナレッジエンジンの支えによって、Appleのデジタルアシスタント「Siri」は、「米国で最も高いビルは?」「クリスマスまであと何日?」といった質問に答えられる。
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