クラウドサービス オープンソース

MSが注力するオープンソース--友好関係を築こうとする理由

マイクロソフトには、オープンソースを敵視してきた長い歴史がある。だが、同社は、オープンソースと友好関係を築こうとしている。

 GoogleとMicrosoftは現在、クラウドの黄金時代を手中にしようとオープン化の競走を繰り広げている。事実、どちらも感心するくらい多くの(そして質も高い)オープンソースのコードを公開しており、Googleなら「Kubernetes」、Microsoftなら量子コンピューターのプログラミング言語に開発キットと、さまざまなものを世界に提供している。オープンソースの歴史を学ぶものからすると、こうした動きは特段、驚くべきことではない。映画「アベンジャーズ/エンドゲーム」のサノスのように、むしろ絶対であり、避けることができない。

 なぜか。オープンソースはこれまでも常に弱者の道具であり、今もそうであるからだ。

オープンソースは競合相手への対抗手段

 ある市場の支配的なベンダーである「X」に対し、「オープンソースのX」を自称するスタートアップが次々と登場するようになって久しい(例えば、私が取り組んだ「Alfresco」は「オープンソースの『Documentum』」であり、それを大きく上回るほど魅力的になっていない)。しかし、さらに興味深いのは、Clouderaの共同創業者のMike Olson氏がオープンソースについて、「エンタープライズインフラにおける不可逆的な見事なトレンド」と語っていることだ。「プラットフォームレベルの支配的なソフトウェアインフラは、この10年、プロプライエタリなクローズドソースの形では登場していない」とOlson氏はいう。

 テクノロジーを真剣に受け止めてもらうには、幅広い普及が必要だった。それを迅速に実現するいちばん簡単なやり方がオープンソースだった。

 だからこそ、「Apache Hadoop」も「MongoDB」も「Apache Kafka」も(さらに続けて、広く採用されているテクノロジーをここに書き加えてもらいたい)、みんなオープンソースなのである。配車サービスが旧来のタクシー会社に挑戦するには、多額の資金を調達する必要があるかもしれない。しかし、ソフトウェアの場合、既得権者たちと張り合うには、テクノロジーをオープンソース化して開発者たちに自由にやってもらうのがいちばんいい。

 Microsoftなどの企業はそこに気付いた。開発者が重要であるため、開発者に自社のプラットフォームでアプリを構築してもらう方法として、テクノロジー大手はオープンソースを受け入れるようになった。とはいえ、カルチャーをプロプライエタリソフトウェアから転換するのは、特にMicrosoftのようなテクノロジー大手からすると、痛みを伴うものであり、すぐにできることでもない。だから、Microsoftが現在、少なくともGitHubで精力的に活動している従業員数を尺度にした場合、世界トップのオープンソースコントリビューターになっているのは、すごいことなのだ。

オープンソースと協力する

 もちろん「オープン」というのは、単にコードだけの問題ではない。オープンソースを採用(および公開)するように企業を教育し直すのは同じくらい困難だし、かつての競合相手と協力していく方法を企業が学ぶのはさらに難しいといっていいだろう。

 たとえば、Googleは先ごろ、同社のクラウドを通じてオープンソース製品の再販に協力していくことを決定した。Googleのオープンソース責任者であるChris DiBona氏はこれについて、「気前のよい魔法のような契約」のようなものではなく、顧客価値を提供するものだと語った。もちろん、やって悪いことではなく、そうすることで、「Amazon Web Services(AWS)」がオープンソースに不親切だとされているのに対し、「Google Cloud Platform」はオープンソースに親切だと位置づけることになる。

 より大きなインパクトを与えられるのはMicrosoftだろう。

 Googleは長年、オープンソースと一緒にやってきた。それに対しMicrosoftは、オープンソースをつぶそうと、力を使ってあらゆることをしてきた長い歴史がある。そのため、Microsoftがオープンソースパートナーと友好関係に入るというのは、もっと大きなニュースなのである。

 ちょうど先日、Microsoftの開発者カンファレンスであるBuildと、Red Hat Summitとにあわせたタイミングで、Microsoftは次のような発表をした。

  • (Googleによる)オープンソースの「Chromium」を自社ブラウザー「Edge」の中核に採り入れ、Appleの「macOS」など他社のOSでもEdgeが動くようにする(注:これが一大事だと思わない人は、Microsoftが独占禁止法をめぐって苦悩した時期を知らない新参者だ)。
  • ONNX」を公開し、「好きなフレームワークでモデルの訓練と調整をする柔軟性をデータサイエンティストにもたらす」。つまり、データサイエンティストが競合するフレームワークを混在させ組み合わせられるようにする。Microsoftのフレームワークで作業を開始し、最後はGoogleの「TensorFlow」で仕上げるといったことが可能になる。
  • オープンソースの「Kubernetes Event-driven Autoscaling」(KEDA)サービスをRed Hatと共同で開発した。これにより、Microsoftの「Azure」だけではなく、「パブリッククラウドでもプライベートクラウドでも、オンプレミスクラウドでも、Kubernetesのサーバーレスコンテナを開発者がデプロイできるようになる」。

 実際のところ、いちばん興味深いのは最後の発表かもしれない。Microsoftがオープンソースと親密になるには何年もかかったが、ついに2015年、オープンソースの最有力ベンダーであるRed Hatと仲良くすることにした。それは、あの「ガン」呼ばわりされたLinuxを膨大な売り上げに変えることを成し遂げた会社だ。そして今では、Microsoftの最高経営責任者(CEO)であるSatya Nadella氏とRed HatのCEOのJim Whitehurst氏は、一緒にステージに登場するほどの仲だ。

 友人ではなくても、少なくとも、味方にはなった。

 両社はAWSを倒す必要がある。そのために、Googleと同じようにオープンソースを頼みにしている。オープンソースは弱者の道具だったし、今でもそうだ。先行きの見えないクラウドというゲームにかかっている賞金の大きさを考えると、質の高いオープンソースのコードが、前例がないほど大量に公開されることが期待できる。

MicrosoftのCEO、Satya Nadella氏
MicrosoftのCEO、Satya Nadella氏
提供:James Martin/CNET

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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