欧州の国家であるエストニアには、歴史が染み込んでいる。首都は中世の面影を色濃く残し、その保存状態は北欧随一だ。しかし、21世紀のエストニアは、見事な電子政府システムを構築した未来を見据える国として、最も知られているかもしれない。
エストニアは国連の電子政府開発指数(EDGI)において最上位グループの一角を占める国であり、国民や公務員は安全なデジタルIDを使用して、決済、詳細な医療記録へのアクセス、インターネット投票など、幅広いサービスをオンラインで利用することができる。
エストニアは、旧ソビエト連邦からの独立宣言から間もない1990年代半ば以降、電子政府の拡大に取り組んできた。大胆で新しいデジタルイニシアチブを次々に打ち出し、さまざまなメディアで取り上げられている。たとえば「e-Residency」(電子居住権)プログラムは、世界中どこに住んでいる人でも政府発行のデジタルIDを受け取って、エストニアのすべての公共電子サービスにアクセスできるという制度だ。
現在、99%の公共サービスを24時間365日オンラインで利用でき、エストニア人の30%が「i-Voting」(電子投票)を利用している。また同国の推計によると、官僚機構の縮小によって800年分の労働時間が削減されたという。
電子政府大国へと生まれ変わるエストニアの改革が成功したことは、1990年代後半から2000年代初頭にかけて必要な要素を積み上げてきた取り組みが正しかったことを示している。こう指摘するのは、Gartnerでデジタル政府を専門とするシニアプリンシパルアナリストのArthur Mickoleit氏だ。
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