仮想現実(VR)と拡張現実(AR)は、珍しいものから便利なツールへと変わりつつあるのかもしれない。MicrosoftやAdobeなどのソフトウェアベンダーがVRとARに力を入れていることは間違いない。Adobeの「Project Aero」からは、メインストリームのデザイナーがAR体験やVR体験の作成を求められるようになる、という同社の予測が伝わってくる。一方、Microsoftは既に複合現実(MR)に大きく賭けている。MRは、「Microsoft HoloLens」でも、HPやDell、サムスンといったOEMのVRヘッドセットでも機能する体験を作り出すためのシステムだ。Microsoftは今回、主力のエンタープライズ製品「SharePoint」にMRを組み込もうとしている。
これは不格好なVRインターフェースではなく、デジタル文書が物理的なファイリングキャビネット内にあるように見せかけるものでも、SharePointライブラリを物理的なライブラリに見立てて中を歩かせるようなものでもない。「Word」文書、「Excel」スプレッドシート、「Visio」の図、領収書の写真、動画、そして現行のSharePointがプレビューで表示できる250以上のファイル形式と同じように、3Dをコンテンツの一種として扱えるようにするものだ。一部の3D形式(3MF、FBX、OBJ、PLY、STLなど)については1年前から、最新のブラウザを使ってSharePointライブラリでサムネイルや全画面ファイルとして閲覧できるようになっている。
「SharePoint spaces」で追加されるのは、3Dポータルを簡単に作成して3Dコンテンツを集約する機能だ。こうしたコンテンツには、製品の3D CADモデル、360度動画(今では多くのスマートフォンや低価格化の進む360度カメラで撮影可能)、売上高や組織図といったデータの3D表示などがある。データの3D表示は、取り立てて言うほどでもないと思えるかもしれないが、データを可視化することで、パターンや例外の発見が容易になる。たとえば、HoloLensで売上高やビジネスワークフローの3D映像を閲覧して操作する機能は、KPMGの各国の「Insights Centre」を訪れるFortune 500企業幹部から大きな支持を得ている。SharePoint spacesは「Power BI」データの3D映像も作成できるので、売上高の急増や急落の時期を確認するために2Dのスプレッドシートを眺めなくても、視覚表示によって瞬時に把握することができる。
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