開発 情報処理推進機構

第5回:要求は膨らみ、計画は狂う--要件定義の妥当性を評価する

「家づくり」と「要件定義」のプロセスを見比べながら、“使い物になる”要件定義を作成するための方法を学んでいく。今回は要件定義のキモともいえる「まとめに取り掛かるプロセス」を紹介する。

システム開発編:やっぱり膨らんだ要求--その先に見えてくる明日はどっちだ

 前回、ようやくパッケージの候補を絞り込んだ千石君。いよいよギャップの部分をどう実現するかを考えるべく、業務の現場と話し合い、一つひとつ詳細を詰めていきました。しかし、具体化すればするほど、要件は積み上がっていきます。

千石君:課長、パッケージをベースに業務を現場と調整しました。

巣鴨課長:ご苦労さん。

千石君:正直、まずい事態です。パッケージ導入のメリットを否定するような話は出ませんでしたが、現場はいろいろ希望を持っていて、一つひとつはたいしたことなくても合わせれば規模が膨れそうです。それで、このままいくと開発と開発後の運用への投資額が計画承認時の予測より4割増です。

巣鴨課長:どんな項目が膨れ上がっているの。

千石君:それと、現場からのヒアリングで気付いたんですが、計画稟議時に説明したこのシステムの効果見込みには誤りがありました。当初は、ウェブ受注の開始によって自社製品の直販率が増えて得られる利益を、単純にウェブでの売上予測から計算していたんです。

 でも、よく考えたらウェブでの受注によって売り上げが増加する分、これまでの方式での受注は減りますよね。だから、この計画単独では計画通りの売り上げが見込めても、既存の他の業務の売り上げが減る分、会社全体で見ると利益が相殺されてしまうんです。他にも……。

巣鴨課長:とりあえず深呼吸3回して落ち着こうか。

千石君:すみません。

巣鴨課長:いいかい、今はまだ要件定義中だ。君が現場を駆けずり回って調整してきた要件だ。そこに大きな瑕疵はないだろう。それは信用しているよ。じゃあ、その要件を積み上げた最新の費用を計上し、間違いに気付いた効果見込みを訂正してみよう。その上で、トータルで回収計画はどうなるのかを検証してみようじゃないか。まず、要件定義の着手時に承認された計画はどうなっていたか思い出してごらん。

当初の年度別投資回収計画
当初の年度別投資回収計画(出典:IPA/SEC)

千石君:投資は開発に1700万円、その後の維持に年額2200万円です。それに対して売り上げが順次増加して、運用開始後3年目に損益分岐点を迎える計画でした。それで承認もらっています。

巣鴨課長:それに対して、現在の状況はどうなっているのかな。

千石君:まず、フィット&ギャップ分析の結果から説明します。1回目の分析で決定したパッケージをベースに、これからパッケージで実施しようとしている業務とギャップを、2回目の分析で埋めに掛かりました。その結果が下の図です。

フィット&ギャップ分析の結果
フィット&ギャップ分析の結果(出典:IPA/SEC)

巣鴨課長:きちんと書けているじゃないか。さて、説明してごらん。

千石君:第1回の分析で高得点だった項目を対象に検討した結果、いずれも実現見込みがあることが確認できました。ですが、販売代理店連携やオーダーメイド商品の受注、コラボ連携の要件を実現するためには、想定した規模よりも多くパッケージのオプション機能を購入して、追加開発することが必要と分かりました。それとコールセンター業務については一部アドオンでの開発が必要と想定していましたが、規模が上振れしています。

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