前回の記事では、テクノロジの進化は早く、常に最新技術を業務に取り入れていくためには、将来見込まれる変化に応えられるネットワークが必要であると述べた。これから生まれる技術を取り入れられるソフトウェアベースの拡張性と柔軟性、それらを素早く反映できる即時性が求められる。
そうした期待に応える技術のひとつとして紹介したのが「SD-WAN」という仕組みだ。今回はSD-WANについてもう少し深掘りして、既存のWANとの違いについて解説していこう。SD-WANの導入を考える上で悩みがちな課題も取り上げ、それぞれに対する解を示したい。
物理的な機器や回線からネットワークの構成、運用を分離
まずは、SD-WANと既存WANとの違いについて紹介しよう。基礎的なことはご存知かと思うが、SD-WANについて詳しくない読者もいると思われるので、基本的な技術をおさらいしておきたい。
SD-WANを一言で言うなら、データセンターの中で利用が広がるSDNをWANの世界にまで広げたものだ。各拠点に設置したエッジ機器と、拠点間を結ぶ物理的なネットワークの上に仮想的なオーバーレイネットワークを構築する。
各拠点を結ぶネットワーク回線が光回線であろうが専用線を使った閉域網であろうが関係ない。管理者はオーバーレイネットワークだけを見ればいい。SDNと同じようにオーケストレータを通じて、物理的な機器やネットワークの変更なしに自由にネットワークを構成、運用できる。
SD-WANは高い? 数年先まで見据えて既存ネットワークと比較しよう
SD-WANについて少し調べたことがある読者が、まず考えるのがコストの違いだろう。SD-WANは、物理ネットワークの上に論理的なオーバーレイネットワークを構築する。それに対して既存のWANなら、その基礎になっている物理的なネットワークだけで構成できる。単純に考えて、旧来の手法の方が低コストに構築できることは明白だ。しかしネットワークは構築したら運用しなければならない。
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