スマートフォンやタブレットは目新しいものではなくなり、日常生活に溶け込み、生活になくてはならないものとなっている。
当然、企業の業務にも活用されるようになっている。通信機能でほとんどの場所でネットにつながり、ノートPCよりも軽量である上に、カメラに加えて全地球測位システム(GPS)などの多様なセンサが搭載され、アプリ次第ではさまざまな業務にも活用できるというメリットがスマートデバイスにあるからだ。
しかし、業務にスマートデバイスを活用しようとするときに懸念されるのがセキュリティだ。
スマートデバイスが登場する以前から、ノートPCを企業外部に持ち出すことで盗難や紛失に遭い、情報が漏えいする事件事故が相次いでいる。スマートデバイスを業務の現場で活用したいとしても、セキュリティのリスクがあることで二の足を踏んでしまうケースも容易に想像できる。
こうした状況で考えたいのが“モバイル端末管理(Mobile Device Management:MDM)”だ。現在のMDMは、端末の内部を業務と私用に論理的に分割する。業務領域と私用領域は、アプリやデータが行き来することはなく、業務で活用されるアプリに格納されるデータを私用領域のアプリで見ることはできない。盗難や紛失の被害に遭った場合、遠隔地から業務領域にあるアプリやデータは削除することができる。
MDMとは別に、アプリとデータを管理する“モバイルアプリ管理(Mobile Application Management:MAM)”、業務に必要なデータだけを管理する“モバイルコンテンツ管理(Mobile Contents Management:MCM)”というソフトウェアも存在する。MDMやMAM、MCMを統合、進化させた“エンタープライズモバイル管理(Enterprise Mobility Management:EMM)”というくくりで製品を提供するところもある。
こうした製品はセキュリティ向上策として意識されるのはもちろんだが、企業全体としての生産性向上策にもなり得る。セキュリティリスクを低減することで、例えば営業部門の直行直帰が可能になるからだ。
セキュリティリスクを懸念するあまり、ノートPCの持ち出しを禁止して、営業日報を書いて上長に提出するために定時を過ぎてから帰社するというのは効率があまりよくない。こうした状況もモバイルを活用することで企業全体として効率を高めることが可能になるはずだ。
MDMから見てモバイル活用の現状はどうなっているのか――。MDMなどを提供する企業6社に集まってもらい、座談会を開催した。いずれもユーザー企業の現状を詳細に語ってくれた。参加したのは以下の6人(肩書きは取材当時、「」内は提供する製品)。
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