企業経営を支える基盤システムとして統合基幹業務システム(ERP)の導入を検討するものの、コストや運用までに掛かる期間がハードルとなって導入に踏み切れない企業は少なくない。しかし、最近になり、ERPの機能をクラウド環境で利用できる「クラウドERP」を提供するITベンダーが増えており、利用の拡大が見込まれている。
クラウドERPは、ハードウェア設置に伴う初期投資が不要な上、運用開始までの期間を短縮できる。さらに、運用開始後の負荷の変動にスケールアウトで対応しやすいほか、常に最新版が利用できるといったメリットがある。
その一方で、クラウド版は、オンプレミス版と比べてカスタマイズの自由度が低い。また、企業の重要なデータをクラウドに保存した際のセキュリティを不安視する声もある。ただし、後者については、プライベートクラウドやハイブリッドクラウドを利用することで解消を図ることも可能だ。
クラウドERPの主な製品には、ワールドワイドでの導入実績が豊富な海外製品と、国内の商習慣にきめ細かく対応できる国産製品がある。以下では、3つの海外製品と2つの国産製品を紹介する。
1.SAP S/4HANA
ERPの“老舗”であるSAPジャパンは、大企業向けの「SAP Business Suite 4 SAP HANA(SAP S/4HANA)」、中堅上位企業や大企業の子会社向けの「SAP Business ByDesign」、中堅・中小企業向けの「SAP Business One」と、一通りのラインアップをクラウド上でそろえている。
SAP S/4HANAは、インメモリ技術による高速データベース基盤「SAP HANA」で構築し、モバイル端末向けのユーザーインターフェース「SAP Fiori」に基づくデザイン設計を特徴とする。大量のオンライントランザクション処理(OLTP)とオンライン分析処理(OLAP)が可能で、クラウド、オンプレミス、ハイブリッドの各形態で提供する。
SAP Business ByDesignは、あらゆる業務を単一のシステムで管理するクラウドERPスイートだ。財務、人事、販売、営業、購買、調達、顧客サービス、サプライチェーン管理などの業務に対応する。
SAP Business Oneは、中堅中小企業における会計管理から顧客関係管理(CRM)、サプライチェーン管理、購買管理まで、主要な業務プロセスの合理化と効率化を支援する。食品、消費財、産業用機械、構成部品、小売り、商社、卸売りなどの業種固有の機能やベストプラクティス、プロセスを組み込んだ業種別ソリューションを用意する。

2.Oracle ERP Cloud
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