シリコンバレーのイメージといえば、スタートアップ企業の開発者たちが厳しい締切りに間に合わせようと夜遅くまで働き、競合に先駆けて自社製品を市場に出そうとする姿が目に浮かぶのではないだろうか。ただ、こうした長時間勤務には弊害がつきものだ。Comparablyが実施した最近の調査によると、ワークライフバランスに満足していると回答したテクノロジ業界の社員は65%にとどまっているとの結果が出た。
ワークライフバランスがうまくいかないと、さまざまな悪影響を及ぼすことが実証されている。残業や長時間勤務によるストレスは、不眠、鬱病、吐き気、糖尿病、記憶障害、心臓病といった健康被害の原因となることもある。このような状況は、従業員のみならず会社にとっても痛手となる。従業員の定着率の低さや健康保険料の高騰につながるためだ。
柔軟な仕事環境戦略を推進し、この分野での執筆活動も手がけるCali Williams Yost氏は、テクノロジ業界の中でも特にスタートアップ企業では、製品化へのプレッシャーが非常に大きいと語る。「確認しないまま放置すると、日夜を問わず全く休みなしの勤務状況になりかねない」とYost氏。ただし、「このような状況は最終的にベストではないことが徐々に認識され、従業員を缶詰状態にしなくても生産性を保つことができるという考えが広まりつつある」とYost氏は説明する。
American Sociological Reviewが発表した2014年の調査には、Fortune 500に選ばれた企業に勤務する700人の従業員を対象として実施した実験について書かれている。対象となった従業員の25%以上は、1週間に50時間以上働いていた。調査団は従業員を2つのグループに分け、1つのグループは働く場所と時間を管理した上で、上司が明確に家庭や自身の生活の大切さを伝え、もう一方のグループにはこれまで通り仕事をしてもらった。
6カ月に渡って実験を続けた結果、指示を与えたグループでは仕事や家庭での衝突が大幅に軽減し、仕事量を管理しながら家族と十分に時間が過ごせると感じていることがわかった。また、同グループは以前より落ち着きを感じ、圧倒されている感覚になることが少なくなったという。
Yost氏によると、テクノロジ業界でワークライフバランスと企業文化が話題にのぼるようになったのはここ数年のことだという。その背景のひとつは、1980年代以降に生まれた若者世代を雇用したいという企業の思いだ。「彼らは一般的に就職先のワークライフバランスを気にかけている」とYost氏は言う。「仕事を探すとき、彼らは柔軟性について、また仕事と生活をいかに組み合わせるかについて考える。これまでの世代とはきっと異なる考え方を持っている」(Yost氏)
また、テクノロジ業界で多様性を重視するようになり、より多くの女性を雇おうとしていることも、ワークライフバランスが注目されるようになった背景だとYost氏は話す。同氏によると、「テクノロジ業界は1日24時間勤務だと思われている」とのことだ。「仕事と生活をうまく組み合わせることは、テクノロジ業界やビジネスリーダーにとって必須の事業戦略であるべきだ。それが、才能のある人材を雇って長く働いてもらい、彼らの生産性をできる限り高めることにつながる」(Yost氏)
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