税務会計と財務会計は一文字違いですが、目的や役割は全く異なります。特に財務諸表で記載されるまでのプロセスに大きな違いがあります。
分かっているようで実は突っ込まれると冷や汗が出てしまう、フリーランスや中小企業のオーナーさんは必見です。
税務会計とは?
税務会計が果たす目的
税務会計を理解する上で、個人と企業での税金の違いは以下の通りです。
- 個人が稼いだ収入(所得金額)に対して課される税金 → 源泉所得税
- 会社が利益を得た収益(所得金額)に対して課される税金 → 法人税
会社員など雇用されていた経験がある方なら源泉徴収という言葉に聞き覚えがあると思います。源泉徴収は源泉所得税という税金のカテゴリに含まれる制度の1つで、個人の所得金額に応じて徴収額が異なります。
これと同じように、企業の場合でも所得金額に応じて法人税額が変化します。企業は利益を追求するための組織であるため、会社の成長のためにも収益は多ければ多いほど良いとされます。
しかし同時に、多くの利益を生み出した分だけ法人税額も高くなるというジレンマがあります。税務会計はそんなジレンマを和らげるべく、法人税を低く抑えるための概念となります。
税務会計と財務会計のメリットとデメリット
「税金が安くなるならすぐに税務会計を導入したい」と思う方もいるかも知れませんが、やはりどちらにもメリットとデメリットがあります。
財務会計の果たす役割の1つに、アカウンタビリティという概念があります。これは株主や債権者などの利害関係者に対して、必要な情報をきちんと開示する義務があるというものです。
「会社を大きくして多くの人の役に立ちたい」「会社を応援してもらうために株主資本利益率(ROE)を高くしてどんどん投資してもらいたい」という気持ちがあるならば、財務諸表の利益は多めに算出したいところです。
しかし、法人税は課税対象が増えるほど、より高い税率が課される累進課税が採用されています。
税務会計は税金を安く抑えるための概念ですから、財務諸表を見ると売り上げは前年度に比べてそれほど伸びてもおらず費用もそれなりにかかっていたりするなど、会社の勢いを感じられない財務諸表になってしまいます。
元気のない財務諸表を見て、投資家は積極的に投資しようとは思えないはずです。
つまり、会社の成長を望みたいのであれば法人税が多少高くついたとしても財務会計を選択し、とにかく法人税の節税対策だけしたいのであれば税務会計を導入するというのが一般的な考え方です。