人工知能(AI)は1950年代に誕生し、その後60年以上にわたって人気の浮き沈みを経験してきた。しかし現在は、ビッグデータ、強力な並列処理、高度なニューラルアルゴリズムの爆発的な拡大によって、AIの復興が起きており、AmazonやFacebook、Googleといった企業が主導権をめぐって争っている。AI専門家のRoman Yampolskiy氏は、2016年は「AIが強力になる」年と述べたが、その爆発的な成長はまだ止まっていない。
AIにはさまざまな形態があるものの、知性に到達するためのメカニズムとして現在最も広範に評価されているのは、機械学習(ML)だ。それが意味するものについて解説しよう。
概要
- どんなものなのか:機械学習は人工知能の下位分野だ。このシステムでは、明示的なプログラミングに依存するのではなく、コンピューターが大量のデータセットを使用して、「訓練」用のアルゴリズムを適用して自身を教育し、予測を行う。
- いつから人気があるのか:「人工知能」という用語は、1950年代にアラン・チューリングによって考案された。機械学習は1990年代に人気を博し、2016年にGoogle傘下のDeepMindが囲碁の世界チャンピオンに勝利したことで、再び世間の注目を集めるようになった。それ以来、MLアプリケーションと機械学習の人気は高まる一方だ。
- なぜ重要なのか:機械学習システムは、大量のデータセットから得た知識や訓練の成果を素早く適用して、顔認識、音声認識、物体認識、翻訳など、数多くのタスクを非常に効果的に実行できるからだ。
- どんな業界が使用しているのか:機械学習は、行政から教育、医療まで、幅広い分野で使われている。マーケティング、ソーシャルメディア、カスタマーサービス、自動運転車などに力を入れる企業も利用可能だ。今では意思決定の主要なツールとして広く認識されている。
- 企業はどのように使用しているのか:機械学習のビジネス活用事例は無数にあるが、突き詰めていくと、どれも同じ使用方法だといえる。すなわち、人間には現実的に理解できないほど大量のデータを処理し、分類して、パターンを特定するという使い方だ。
- 安全性と倫理に関する懸念はどのようなものか:AIはすでに、高度なマルウェア対策ソフトウェアをバイパスするように訓練されており、将来的に重大なセキュリティリスクとなる可能性がある。倫理面での懸念も多く、特に失業に関して不安視されているほか、自動運転車で求められるような倫理的判断を機械にさせることの実用性が危惧されている。
- どのような機械学習ツールが提供されているのか:IBM、Amazon、Microsoft、Googleといった企業が機械学習用のツールを提供している。無料のプラットフォームもある。
どんなものなのか
機械学習はAIの一分野だ。AIに到達するためのツールは、他にもルールベースのエンジン、進化的アルゴリズム、ベイズ統計学などがある。1997年にチェスでGarry Kasparov氏に勝利したIBMの「Deep Blue」など、初期のAIプログラムの多くはルールベースであり、人間のプログラミングに依存していたが、機械学習は、コンピューターが自分自身を教育して独自のルールを設定できるツールだ。2016年に囲碁の世界チャンピオンを破ったGoogleのDeepMindは、機械学習を使用して、達人の差し手に関する大規模なデータで自分自身を訓練した。
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